限定承認の落とし穴~譲渡所得税について
みなさんこんにちは!
名古屋も含め、まだまだ寒い季節が続きますので、みなさんもお体にはお気を付けください。
さて、本日は、「限定承認の落とし穴~譲渡所得税について」についてお話していこうと思います。
そもそも限定承認とは、簡単にいうと、被相続人の相続について、遺産の限度で負債を取得するという制度です。
たとえば、遺産が1億円、負債が2億円ある場合、限定承認を行えば、遺産1億円の範囲で負債を引き継ぐため、結果的に相続する負債は1億円となります。
限定承認が行われるケースとして、遺産の額や負債の額が分からないケースや、借金もあるが自宅などを手放したくないケースなどです。
もっとも、限定承認は極めてマイナーな手続きであるため、令和2年時点において、相続放棄の件数が23万4732件であるのに対し、限定承認は675件のみとなっています。
その要因となっているのは、限定承認の法整備があまり進んでおらず、また、手続きも極めて煩雑であり、また、対応できる専門家がほとんどいないことがその要因と考えられます。
また、限定承認には、いくつかの落とし穴もあり、それも限定承認の数が増えていない要因だと考えられます。
以下では、限定承認の落とし穴について、まず、譲渡所得税についてお話していきます。
通常の相続の場合、被相続人が所有していた不動産を相続したとしても、当該不動産を売却しない限り、相続税がかかることはあっても、譲渡所得税はかかりません。
なぜなら、譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益にかかる税金だからです。
しかし、限定承認の場合は、相続であるにも関わらず、不動産を売却しなくとも、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、不動産の金額や所有期間によって異なりますが、売却益の約20%に税金がかかる場合があります。
たとえば、不動産の価額が3000万円の場合、限定承認をしてしまうと、不動産の価額の20%の600万円が譲渡所得税として税金を納めなければならなくなる場合があります。
仮に、3000万円の不動産と負債が2400万円のみの場合、限定承認を行うと、2400万円の負債に加えて、600万円の譲渡所得税も支払わなければならなくなる場合があります。
なお、仮に、負債の額と譲渡所得税の額を合計した金額が遺産の額を超えた場合は、遺産の額に相当する負債(譲渡所得税分を含む。)を支払うことで足り、遺産を超えた額を支払う必要はありません。
このように、限定承認については、万が一手続きを行う場合は、譲渡所得税に気を付ける必要があり、手続きを行う際は、限定承認を行った経験のある弁護士や税理士にご相談されることをおすすめします。
さて、次回は今回の続きとして、「限定承認の落とし穴~相続人全員での手続き」についてお話していこうと思います。
それではまた!