限定承認の落とし穴~先買権
みなさんこんにちは!
今回は、前回に引き続き限定承認の注意点として、「限定承認の落とし穴~先買権」についてお話していこうと思います。
まず先買権とは何かについてですが、そもそも限定承認では債務の弁済のために遺産を換価する必要がある場合、原則、競売を行う必要があります。
もっとも、競売となると相続人としては、取得したい遺産があったとしても取得できない可能性が高くなるため、法律は、相続人の利益にも配慮して、相続人に対し、遺産を優先的に取得する権利である先買権を認めました。
つまり、先買権とは、競売手続きを停止させ、相続人に遺産の優先取得権を認めた制度のことをいいます。
この先買権の注意点として、抵当権などの担保権が実行されたことによる競売については、当該担保権者の同意がない限り、先買権を行使しても、担保権の実行を止めることはできません。
たとえば、自宅に抵当権が設定されている場合、相続人が自宅を取得しようと考えたとしても、抵当権者が抵当権を実行した場合、相続人は先買権を行使しても、抵当権の実行を止めることはできません。
この場合、相続人としては、抵当権者と交渉して、任意に抵当権の実行を止めるしかありません。
そのため、先買権は、取得希望の遺産に担保権が付いている場合、先買権を行使したとしても空振りになる可能性もあり、また、先買権を行使するためには、事前に家庭裁判所に選ばれた鑑定士に鑑定を行ってもらう必要があるため、鑑定費だけ余分に掛かる可能性もあります。
また、先買権を行使した結果、遺産を取得したとしても、相続人が一人の場合や法定相続人全員が法定相続分の割合で先買権を行使した場合以外は、法定相続分割合による相続登記を行う必要があります。
この法定相続分割合による相続登記をせず、いきなり先買権を取得した相続人一人の単独名義にしてしまうと、遺産を処分したこととなり、限定承認が無効になる可能性があります。
このように、先買権については、遺産に担保権が付いている場合や、登記手続きの際に落とし穴があるため、先買権の行使を検討されている方は、一度、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
さて、次回は、今回に引き続き限定承認についての話題として、「限定承認の落とし穴~競売」についてお話していこうと思います。
それではまた!