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遺言執行業務~相続人その他利害関係人への通知

カテゴリ: 遺言執行

みなさんこんにちは!

 

名古屋も含め、だいぶ温かく、むしろ暑くなってきました。


寒暖の差が激しい時期ですので、お体にはお気を付けください。

 

さて、本日は、前回に引き続きまして、「遺言執行業務~相続人その他利害関係人への通知」について、お話していこうと思います。

 

まず、遺言執行者に就任した方は、相続人及び利害関係人に対し、遺言書の内容を通知する必要があります。

 

相続人への通知については、「遅滞なく」行う必要があり、かつ、通知する相続人の範囲について、たとえ遺留分を有しない相続人であっても、通知する必要があります。

 

通知する相続人が漏れてしまった場合は、損害賠償責任を負う可能性がありますので、ご注意ください。

 

また、利害関係人に対する通知については、法律上規定された義務ではありませんが、利害関係人に対しても、通知をした方が良いでしょう。

 

なお、利害関係人とは、たとえば、相続人以外の人で、遺言書により遺産を受け取る方(受遺者といいます。)や遺言による認知がされた場合の認知された子などがこれに当たります。

 

相続人及び利害関係人への通知について、相続人や利害関係人の住所や名前等が不明な場合は、遺言執行者が戸籍謄本等をたどって、相続人や利害関係人の住所や名前等を調査する必要があります。


戸籍謄本の取得の方法が分からない場合は、専門家に依頼すれば、相続人や利害関係人の調査を行ってくれます。

 

次に、相続人や利害関係人に対して行う通知について、法律上規定されている事項は、「遺言の内容」のみですが、実務上は以下のことを通知することが多いです。
①被相続人の死亡の事実
②遺言書の存在とその方式(自筆か公正証書か)
③遺言書の内容
④遺言執行者の就職の意思表示(前回ご説明した内容です。)
⑤遺言執行者の権限と職務(民法1012条)の説明
⑥遺言執行者の就職による相続人の処分行為の制限(民法1013条)の説明
⑦遺言執行の費用、遺言施行者の報酬
⑧執行しようとする遺言を撤回する内容及び矛盾する内容の遺言の有無の紹介

 

なお、②遺言書の存在とその方式、③遺言書の内容については、相続人及び利害関係人に対する通知の際、遺言書のコピーを添付することもあります。

 

このように、遺言執行者は、相続人及び利害関係人に、遺言の内容や法律の説明等を行わなければならず、かなりの負担がかかる場合があります。

 

また、遺言執行は間違ったやり方で行ってしまうと、トラブルに巻き込まれ、相続人等から損害賠償請求をされる可能性があるため、注意が必要です。

 

そのため、困った際は、弁護士といった専門家にご相談するか、もしくは、遺言書を作成する時点で、遺言執行者を定めておくことをおすすめします。


さて、次回は、今回に関連して、遺言執行者の業務として、「遺言の執行~推定相続人の廃除」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!
 

遺言執行業務~遺言執行者就任の通知

カテゴリ: 遺言執行

皆さんこんにちは!


名古屋もだいぶ暖かくなってきましたね。

 

そろそろ花見のシーズンですので、今年こそはコロナ対策をばっちりして、花見に行きたいと考えております。

 

さて、本日は、前回に引き続いて、「遺言執行業務~遺言執行者就任の通知」について、お話していこうと思います。

 

まず、遺言執行者の最初の業務として、相続人への遺言執行者就任の通知を行う必要があります。

 

遺言執行者就任の通知とは、自分が遺言執行者になったことを示す通知です。

 

この通知の書式や文体については、特に指定のものがあるわけではないため、文献や過去の事例等を調べて、遺言執行者が一から作成する必要があります。

 

実務では、遺言執行者になった人は、次回お話しする、相続人その他の利害関係人に遺言書の内容を伝えるタイミングで、自身が遺言執行者になったことも伝えることが多いです。

 

なお、遺言執行者に指定された人は、必ず遺言執行者になる必要もなく、辞退することや、弁護士などの専門家に、代わりに遺言執行を行ってもらうこともできます。

 

また、遺言執行者を辞退する場合は、辞退する旨の通知を相続人に送ります。

 

万一、遺言執行者を辞退したいと考えているにも関わらず、適切に遺言執行者辞退の手続きを行わなかった場合、遺言執行者に自動的に就任したことになることがあるため注意が必要です。

 

また、遺言執行者は、一度、執行者になってしまうと、勝手に辞任することはできず、辞任するためには、正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得ることが必要とされています。

 

そのため、安易に遺言執行者に就任することが危険な場合もあるため、一人で手続きを行えるか不安な方は、相続に強い弁護士にご依頼されることをおすすめします。

 

実際、遺言執行者に対して、相続人が損害賠償請求を行った事例もありますので、手続きに自信がない方や忙しくて手続きを行えない方は、専門家にご相談された方が良いかもしれません。

 

さて、次回は、今回に引き続き、「遺言執行業務~相続人その他利害関係人への通知」についてお話ししようと思います。

 

それではまた!
 

遺言執行者の報酬

カテゴリ: 遺言執行

 

最近ようやくコロナも落ち着いてきたと思いましたが、現在、名古屋も含め、感染者が激増している状態です。

 

当法人では、引き続き、安心してご相談いただけるように、コロナ対策を徹底していこうと思います。

 

さて、今回は、遺言執行者の業務内容について、お話します。

 

基本的に、遺言執行者の行う業務としては、以下のとおりになります。

 

① 就職の通知
② 相続人の調査
③ 相続財産の調査
④ 相続財産目録の作成及び交付
⑤ 不動産の遺言執行
⑥ 預貯金の遺言執行について
⑦ 株式等出資持分の遺言執行について
⑧ 任務終了の通知
⑨ 保管物の引渡
⑩ 執行の顛末報告

 

注意点として、遺言執行者の行う業務のうち、たとえば、①就職の通知や④相続財産目録の交付を特定の相続人に行わなかった場合、損害賠償責任を負うことがあります。

たとえ、その相続人が遺言書では何も取得できないことになっていたとしても、責任を負う場合がありますので、注意が必要です。
実際、通知等を怠った遺言執行者に損害賠償請求が認められた事例がありますので、遺言執行を行う場合は、必ず、相続人全員に通知しましょう。

 

また、相続法が改正されたことにより、当該遺言書が令和元年7月1日以降に作成されたかどうかで、遺言執行の内容が異なる部分がございます。


間違った知識で遺言執行してしまうと、トラブルの原因にもなりますので、事前に遺言執行の方法を十分調べたうえで、手続きを行いましょう。

 

このように、遺言執行業務は、いろいろな落とし穴や専門知識が必要になる部分がございます。
そのため、遺言執行にご不安な方は、一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

なお、専門家の中には、改正相続法施行前に作成された遺言書か否かで、遺言執行の内容が変わることを知らない方もいますので、ご相談される際は、相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。

 

さて、次回は、今回に引き続き、遺言執行業務に関して、「遺言執行業務~遺言執行者就任の通知」について、ご説明しようと思います。

 

それではまた!
 

遺言執行者の報酬

カテゴリ: 遺言執行

みなさんこんにちは!

 

名古屋も含め、全国的にコロナの感染患者が激減しており、ようやく落ち着いてきました。

 

もっとも、私自身、いつコロナに感染するか分からない状況と思っておりますので、感染対策は続けていこうと思います。

 

さて、本日は、「遺言執行者の報酬」について、お話しいたします。

 

まず、遺言執行者の報酬は、誰を遺言執行者に指定するかによって、大きく異なります。

 

専門家を遺言執行者にする場合、私の経験からすると、相場は、遺産総額の1%~3%前後が多いように感じます。

また、依頼する専門家ごとによっても、遺言執行者の報酬がかなり異なるという印象です。

 

たとえば、信託銀行の場合、遺言執行者の報酬として、相続財産のうち、5000万円以下の部分が2%で、最低報酬額が165万円というところもあります。

 

また、弁護士の場合、遺言執行者の報酬として、相続財産の1%~2%程度になるところが多いです。

 

上記の例でいうと、遺産が3000万円の場合、信託銀行では、遺言執行者の報酬が、最低報酬金の165万円となります。

 

他方、弁護士の場合、仮に2%の報酬だとしても、遺言執行者の報酬は60万円となり、信託銀行の半分以下となります。

 

このように、遺言執行者をどの専門家に依頼するかによって、費用が異なります。

 

そのため、専門家を遺言執行者に指定する場合は、遺言執行者の報酬金額も参考に、どの専門家に依頼するかを検討された方がよいでしょう。

 

なお、弁護士以外の専門家(信託銀行や司法書士、行政書士等)が遺言執行者になった場合、相続人でもめているケースでは、遺言執行者が一方的に辞任することもあるため、注意が必要です。

 

さて、次回は、今回に関連して、「遺言執行者の業務内容」についてお話ししようと思います。

 

それではまた!

 

「争いを減らす自筆証書遺言の書き方」

カテゴリ: 遺言書の作成

皆さんこんにちは!

 

名古屋もようやく緊急事態宣言が解除されましたね!

また、ワクチン接種が広がったため、感染者数も減少しています。

もっとも、まだまだ感染のリスクがありますので、気を引き締めていきたいところです。

 

さて、本日は、「争いを減らす自筆証書遺言の書き方」について、話していこうと思います。

 

まず、自筆証書遺言を書くうえで大切なこととしては、①抽象的な文言を書かない、②遺言執行者を指定することです。

 

1 ①抽象的な文言を書かない

まず、「全財産を長男にまかせる」という文言だと、長男に全財産が渡らない可能性があります。

 

なぜなら、「まかせる」という文言だけでは、長男に全ての財産を相続させる意思なのか、または、管理だけを任せる意思なのか判然としないためです。

 

また、「自宅の土地を長男に相続させる」という文言だと、自宅の建物は誰が取得するか分からず、争いなる可能性があります。

 

このように、自筆証書遺言において、文言が抽象的な場合は、遺言書の解釈に争いがおこる可能性があるため、できる限り明確に書きましょう。

 

たとえば、相続人のうちの一人に相続させる場合は、「私の全財産を長男(名前と生年月日を記載)に相続させる」と「誰に

」「何を」「相続させる」というように記載します。

 

また、相続人以外に財産を渡す場合は、「私の全財産を従兄弟(名前と生年月日、住所を記載)に遺贈する」と「誰に」「何を」「遺贈する」というように記載します。

 

2 ②遺言執行者を指定する

 

遺言執行者が指定されていない遺言書だと、遺言書の内容がすぐには実現しない可能性があります。

 

たとえば、土地の名義を変える時に、相続人全員の署名、押印が必要になるケースもあります。

 

この場合、相続人のうちの一人が署名、押印を拒んだ場合、裁判所の手続きを行わなければならなくなる場合もあります。

 

そのため、遺言書には、遺言執行者を指定しておいた方が良いでしょう。

 

具体的な記載文言として、たとえば、当法人を遺言執行者として指定する場合だと、

「私は、この遺言書の遺言執行者として、弁護士法人心(愛知県名古屋市中村区椿町14-13 ウエストポイント7F)を指定する」

というように記載します。

 

 

以上のように、自筆証書遺言には、些細な文言の違いや遺言執行者の記載の有無で、争いになる場合があります。

 

そのため、遺言書作成にご不安な方は、一度、作成された文案を専門家に確認いただくことをオススメします。

 

さて、次回は、「遺言執行者の報酬」についてお話していこうと思います。

 

みなさんもお体にはお気を付けください!

それではまた

 

作成日の記載に問題がある遺言

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

名古屋も緊急事態宣言が延長され、まだまだ予断を許さない状態となっています。

 

私自身、ワクチンを2回接種しましたが、ワクチンを接種しても、感染するリスクがあることから、引き続きマスクの着用、手先の消毒等、感染予防対策を行っております。

 

さて、本日は、前回同様、問題になる遺言書として、「作成日の記載に問題がある遺言」についてお話していこうと思います。

 

まず、手書きの遺言書(自筆証書遺言といいます。)の場合、作成日を記載する必要があります。

作成日のない遺言書は、他の要件を満たしていても、無効になります。

 

また、この作成日について、「令和3年9月」とのみ記載し、「日」の記載のない遺言書や、「令和3年9月吉日」や「令和3年正月」と記載された遺言書は、無効になる場合があります。

実際の裁判においても、作成日の特定ができていないものとして、遺言書自体を無効と判断されたものが多々あります。

 

このように、作成日の書き方一つをとっても、失敗が許されないのが遺言書になります。

 

そのため、自筆証書遺言を作成する際は、日付を間違いなく記載し、かつ、「令和○年○月○日」というように、明確な日付を書くようにしましょう。

 

なお、日付は、和暦だけでなく、西暦や「R3.9.15」のように、略して書いても、基本的に問題ありません。

 

また、遺言書作成にご不安な方は、一度、専門家に遺言書の内容に誤りがないかを確認してもらうのも良いかもしれません。

 

さて、次回は、「争いを減らす自筆証書遺言の書き方」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

 

 

手を添えられて作成された遺言書(添え手で作成された遺言書)

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

名古屋も含め、まだまだ暑い日が続きますので、みなさんも熱中症には、十分お気を付けください。

 

さて、本日は、前回に引き続き、問題になる遺言書として、「手を添えられて作成された遺言書(添え手で作成された遺言書)」について、お話ししていこうと思います。

 

まず、結論から申し上げますと、他の人に手を添えてもらって遺言書を作成することは、おすすめしません。

 

なぜなら、添え手によって作成された遺言書は、原則無効と考えられているからです。

 

 

そもそも、自筆証書遺言は、財産目録以外、基本的に一人で書く必要があり、他の人と共同で作成することはできません。

 

また、添え手によって作成された遺言書では、添え手をした人の意思が遺言書の内容に介在する危険性があります。

 

そのため、添え手によって作成された遺言書は、原則、無効であると考えられているのです。

 

もっとも、添え手で作成された遺言書であっても、全て無効というわけではなく、例外的に

 

①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、

 

②他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支え を借りただけであり、

 

③添え手をした他人の意思が介入した形跡のないこと

 

の3つの要件を満たす場合に限り、例外的に、遺言書が有効となると考えられています。

 

このように、添え手によって作成された遺言書が有効になる場合は限定されているのが現状です。

 

実際、添え手による遺言書が有効になったケースは、それほど多くありません。

 

そのため、遺言書を作成される場合は、後々無効になるリスクも考えると、添え手によることは、おすすめできません。

 

万一、手が震えて文字を書くことができないという方であれば、公正証書遺言を作成された方が良いでしょう。

 

公正証書遺言の場合、まったく字が書けない方であっても作成することができますし、また、入院している方であっても、公証人が病院まで来ることも可能です。

 

このように、遺言書の作成には、いくつもの落とし穴があるため、遺言書を作成される際は、一度、専門家にご相談された方が良いでしょう。

 

さて、次回は、引き続き問題になる遺言書として「作成日の記載に問題がある遺言」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

財産の一部しか記載されていない遺言書

カテゴリ: 遺言書の作成

 みなさんこんにちは!

 

 名古屋もようやく緊急事態宣言が解除されました。
 また、予防接種を受ける方も多くなってきましたね。

 

 もっとも、まだまだコロナウイルスの感染が拡大していますので、注意が必要です。

 

 さて、本日は、よくある問題ある遺言書の一つとして、「財産の一部しか記載されていない遺言書」について、お話ししようと思います。

 

 まず、結論から申し上げますと、「財産の一部しか記載されていない遺言書」は、紛争のトラブルになる可能性が高いため、おすすめしません。


 そもそも、財産の一部しか記載されていない遺言書とは、たとえば「自宅のみ長男に相続させる」とだけ一部の財産の分け方のみ記載され、他の預貯金等の財産の分け方については、記載されていない遺言書のことを言います。

 

 この遺言書のように、財産の一部しか記載されていない遺言書だと、他の部分は、相続人全員で協議する必要があります。
 
 この遺言書の場合、他の相続人としては、「自宅は長男がもらうのだから、預貯金はこちらがもらう」といった主張になりやすく、長男としては、「預貯金も多少はもらいたい」という主張になりやすくなります。

 

 そうなってしまうと、相続人間で泥沼の紛争になり、裁判などをした結果、解決までに、3年以上かかる可能性もあります。

 

 このように、財産の一部しか記載されていない遺言書は、のちのちトラブルになる可能性が高いため、他の財産についても、分け方を決めておく方が良いでしょう。

 

 また、特定の相続人に財産を全て渡す際も、「自宅と預金と株を、長男へ相続させる」と記載するのではなく、「自宅と預貯金を含む一切の財産を長男に相続させる」と記載した方が、漏れがなくなります。

 

 そのため、私としては、遺言書を作成される際は、「その他一切の財産について、○○に相続させる」という文書を入れることをおすすめしております。
 こちらをお書きいただくことによって、少しでも相続人間のトラブルを減らすことが可能になるためです。

 

 専門家が携わって作成された遺言書でも、この部分が抜けていることがありますので、注意が必要です。

 

 万一、この部分が欠けている遺言書がありましたら、書き直していただいた方が良いかもしれません。

 

 さて、次回は、今回に引き続き問題になる遺言書として、「手を添えられて作成された遺言書(添え手で作成された遺言書)」について、お話ししようと思います。

 

 それではまた!

遺留分対策③~養子縁組の活用

カテゴリ: 遺留分対策

 みなさんこんにちは!


 名古屋も含めて、緊急事態宣言が続くなか、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 

 私は、ジムでの筋トレができないため、自宅で筋トレを行っております。

 

 少しでも早く、コロナが終息することを願うばかりです。


 さて、本日は、前回に引き続きまして、遺留分対策に関するお話として、「遺留分対策③~養子縁組の活用」について、お話していこうと思います。

 

1 養子縁組を活用すれば遺留分額を減らすことが可能!

 

 結論から申しますと、養子縁組を活用すれば、遺留分額を大幅に減らすことができます。


 具体的には、相続財産の額にもよりますが、遺留分額を半分にすることも可能になります。

 

 

2 養子縁組を活用した場合の具体例

 

 たとえば、父と長男と長女がいる家庭で、父が長男に全財産を渡すという遺言書を残したケースで考えてみます。

 

 父の財産は、自宅の土地と建物(3000万)、預貯金(1000万)あります。

 

被相続人:父
相続人:長女、長男
父の財産:自宅の土地と建物(3000万)
     預貯金(1000万)

 

 この場合、父が亡くなった後、長女は長男に対して、遺留分侵害として、1000万円を請求することができます。

 

 他方、長男に子が2人おり、父と長男の子(父から見て孫)が養子縁組をした場合、相続人は、長男、長女、孫2人の、合計4人となります。


 そのため、遺留分額は、500万円となります。

 

 このように、養子縁組をし、養子を増やすことによって、遺留分額を大きく下げることが可能になります。

 

 

3 養子縁組をする際の注意点

 

 養子縁組をする場合、養子の数を多くしすぎた場合や純粋に遺留分対策の目的のためだけに養子縁組をする場合は、養子縁組が後々、無効になる可能性があります。


 たとえば、亡くなる直前に5人と養子縁組をした場合などは、養子縁組が無効になる場合があります。
 

 このように、養子縁組については、遺留分対策として、高い効果を発揮する反面、注意点も存在します。


 そのため、遺留分対策で養子縁組を活用する場合は、一度、相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。

 

 

 さて、次回は、問題になる遺言として、「財産の一部しか記載されていない遺言書」について、お話していこうと思います。


 それではまた!

 

 遺留分について弁護士にご相談をお考えの方はこちら
  

遺留分対策②~生前贈与の活用

カテゴリ: 遺留分対策

 みなさんこんにちは!

 

 名古屋も含め、全国的にコロナウイルスの感染者が増加しており、まだまだ気が抜けない状況です。

 

 一刻も早く、ワクチンが一人でも多くの方に行き渡ることを願うばかりです。

 

 さて、今回は、前回と関連して、「遺留分対策②~生前贈与の活用」についてお話していこうと思います。

 

 結論から言いますと、遺留分対策をする場合は、できるだけ早い段階から、相続人や他の親族に生前贈与をすることをおすすめします。

 

 理由としては、なるべく早めに生前贈与をしておいた方が、遺留分請求額を大きく減らすことが可能になるためです。

 

 そもそも、遺留分を計算するためには、亡くなった当時の遺産総額に、一定の生前贈与を加え、債務を控除して、遺留分の基礎となる財産額を計算します。

 

 そのため、基本的に遺留分額を減らすためには、遺産総額を減らし、かつ、一定の生前贈与にも当たらないようにする必要があります。

 

 ここで、前回は、保険を活用して、遺産総額を減らすことをご説明しました。

 

 そこで、今回は、生前贈与を使って遺産総額を減らし、かつ、一定の生前贈与にも当たらない方法について、ご説明します。

 

1 生前贈与を全く使わなかった場合

 まず、簡単な事例として、父と子供2人(息子と娘)、財産は、自宅が2000万、預貯金が2000万円という事例を使ってご説明します。


 父の希望としては、娘にすべての財産を渡したく、遺留分対策もしたいとのことでした。


 この場合、父が娘にすべての財産を渡す遺言書を書き、亡くなった場合、息子は娘に対して、遺留分として、1000万円を請求することができます。


計算式としては、遺産総額4000万円の4分の1が遺留分額となります。

 

【家族構成】
 父、息子、娘
【相続財産】
 自宅(2000万円)
 預貯金(2000万円)
【遺留分額】
 1000万円

 

2 生前贈与を活用した場合

 この場合、生前贈与を活用することによって、遺留分額を大幅に減額できる可能性があります。


 たとえば、父が娘に自宅を贈与し、その11年後に、父が亡くなったとします。

 

 この場合、基本的に11年前の自宅の贈与は、遺留分の計算の対象外(「一定の生前贈与」には当たらない)となり、遺留分額は、500万円となります。

 

【家族構成】
父、息子、娘
【相続財産】
自宅(2000万円)
→11年前に娘に贈与
預貯金(2000万円)
【遺留分額】
500万円

 

3 遺留分の計算の対象外となる生前贈与とは

 このように、生前贈与を活用することによって、遺留分額を大きく減らすことが可能です。

 

 ここで、遺留分の計算の対象外(「一定の生前贈与」に当たらない)となる生前贈与について、ご説明します。

 

 基本的に、相続人に対する10年以上前の贈与相続人以外の者に対する1年以上前の贈与は、遺留分の計算の対象外となります。

 

 そのため、先ほどの事例でいうと、たとえば、自宅を娘ではなく、娘の子供(孫)に贈与した場合、基本的に、その贈与が父の亡くなる1年以上前だと、遺留分の計算の対象外となります。

 

 もっとも、注意点として、たとえば、父が亡くなる11年前に当時の全財産を贈与してしまった場合は、例外的に遺留分の計算の対象となる場合があります。


 また、このことは、相続人以外への贈与についても同じです。

 

 そのため、生前贈与に関しても、やりすぎてしまった場合は、遺留分対策として効果が生じない可能性がありますので、遺留分対策として、生前贈与を行う場合は、一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

 これまでのお話をまとめますと、基本的に、10年以上前の相続人への生前贈与と、1年以上前の相続人以外の人への生前贈与は、遺留分の計算の対象外となります。


 もっとも、生前贈与の額によって、遺留分の計算の対象となる場合もあるため、注意が必要です。

 

 そのため、遺留分対策として、生前贈与を活用される場合は、できるだけ早い段階から、相続人や相続人以外の人に生前贈与を行っておくことをおすすめします。

 

 さて、次回は、今回と関連して、「遺留分対策③~養子縁組の活用」についてご説明していこうと思います。

 

 それではまた!


 

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