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遺留分対策①~保険の活用

カテゴリ: 遺留分対策

 みなさんこんにちは!
 
 名古屋も含め、全国で緊急事態宣言が解除されましたが、まだまだ感染者は増加傾向にあるため、油断ができない状態です。


 当法人では、引き続き、コロナ対策として、従業員のマスク着用の徹底、出勤時の検温チェック、定期的な空気の入れ替え等を行っております。


 また、電話やメールでのご相談やビデオ通話でのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

さて、本日は、遺言書を作成するうえで、切っても切り離せない課題として、「遺留分対策①~保険の活用」と題して、お話していこうと思います。

 

 そもそも遺留分とは、簡単に言うと、相続人に保証されている最低限度の相続の権利のことをいい、たとえ、遺言書で何も財産を渡さないと記載されていても、遺留分は認められます。
 
 この遺留分は、しっかり対策をしておかないと、財産を渡された相続人にとって大変なことになるかもしれません。
 
 なぜなら、遺留分はお金で支払わなければならず、お金が支払えない場合は、遺産を売るか、借金をしてでも払わなければならないためです。

 

 例えば、父と長男、長女の家庭で、遺産について、預貯金500万円と自宅(父と長男家族が同居していた、価値は3500万)のみのケースで、父が長男に全財産を渡す遺言書を作成した場合について考えてみます。

 

家族構成   父 長男 長女

遺産     預貯金500万

       自宅(3500万)

遺言書の内容 長男にすべてを相続させる

 

 

 この場合、長女は、長男に対して、遺留分侵害として、遺産の4分の1に当たる1000万円を請求することができます。
 
 長男としては、遺産の500万円だけでは、請求額に満たないため、長男の手持ちの財産から残り500万円を支出するか、自宅を売るなどしてでも、500万円を返さなければなりません。

 

 こうなってしまうと、長男としては、遺言書で財産はもらったが、自宅を手放さなくてはならなくなるかもしれず、非常に困った事態になります。

 

そのため、遺言書を作成する場合は、遺留分も考慮して、ご生前中からしっかり、遺留分対策を行う必要があります。

 

 さて、前置きが長くなりましたが、具体的な遺留分対策としては、まず、生命保険を活用することが考えられます。


 具体的には、預貯金を生命保険に変え、生命保険の受取人を、遺産を受け取る相続人の一人にしておくことが考えられます。

 

 生命保険は、原則、遺産の対象になりませんので、預貯金を生命保険に変えることで、遺留分の額を減らすことができます。

 

 先ほどの家庭(父と長男、長女、遺産は預貯金500万円と自宅(3500万円)で、預貯金を生命保険に変えた場合について、検討します。

 

家族構成   父 長男 長女

遺産     預貯金500万

       自宅(3500万)

遺言書の内容 長男にすべてを相続させる

 

 遺産の総額は、3500万円となり、遺留分は、その4分の1の875万円となります。

 

 このように、預貯金を保険に変えるだけで、遺留分の額を125万円減額することが可能です。

 

 そのため、遺留分対策をする場合は、預貯金を生命保険に変えることが有効となります。

 

 もっとも、ここで気を付けていただきたい点として、生命保険金の額が遺産に比して著しく多い場合は、例外的に生命保険金が遺留分の対象に含まれる場合があります。

 

 たとえば、遺産が2000万円の家庭で、生命保険金が2000万円の場合、生命保険金も遺留分の対象になる可能性があります。

 

そのため、遺留分対策として保険を活用する場合は、一度、弁護士等の専門家にご相談することをおすすめします。

 

 以上のように、遺留分対策として、生命保険の活用は非常に有用でありますが、使い方を間違えてしまうと、遺留分対策にならない場合もあるため、注意が必要です。

 

さて、来月のテーマは、遺留分対策のパート②として「遺留分対策②~生前贈与の活用」についてお話していこうと思います。

 

 

それではまた!

公正証書遺言の作成までの流れ

カテゴリ: 遺言書の作成

 みなさんこんにちは!

 

 名古屋も2月28日で緊急事態宣言が解除されました。

 

 もっとも、まだまだ全国的に感染者数が多いため、あまり気を緩まない状態が続いております。


 当法人でも、引き続き、手先の消毒、定期的な換気等のコロナ対策を徹底しております。

 

 さて、本日は、「公正証書遺言の作成までの流れ」について、ご紹介します。

 

 まず、公正証書遺言書作成の一般な流れとしては、以下のようになります。

 

①遺言を作成される方(遺言者といいます)の戸籍謄本等の必要書類を集めます


②公証役場に遺言書を作成したい旨の相談をします


③公証役場に必要書類を提出し、公証人と遺言書の内容の打ち合わせを行います


④遺言書の案が決まりましたら、実際に遺言書を作る日を決めます


⑤実際に遺言書を作成します

 

 なお、専門家に遺言書作成を依頼した場合は、必要書類の収集や公証人との遺言書案の調整等は、その専門家が行ってくれます。

 以下では、それぞれの手続きについて、簡単にご説明します。

 

1 必要書類の収集

 まず、公正証書遺言を作成する場合は、遺言者の戸籍謄本、印鑑登録証明書、遺産を渡す相続人の戸籍謄本、相続人以外に渡す場合は、その人の住民票が必要になります。


 また、財産の内容次第では、土地や建物の登記事項証明書、通帳のコピー、株の残高証明書等が必要になります。

 

2 公証役場へ連絡

 必要書類が集まりましたら、公証役場に連絡し、遺言書を作成したい旨を電話かメール等で伝えます。


 実際に公証役場に行って、相談をすることが可能な場合もありますので、詳しくは、お近くの公証役場にお問い合わせください。

 

3 公証人との遺言書の内容の打ち合わせ

 必要書類を公証役場に提出しましたら、どのような内容の遺言書にするのか公証人と打ち合わせを行います。


 たとえば、長男に財産を渡したい場合は、その旨を公証人に伝えていただければ、公証人が法的文言に変えてくれます。


 また、遺言書に残したいお気持ちの部分についても、公証人に伝えれば、記載してくれる場合もあります。

 

4 実際の遺言書作成日を決める

 遺言書の案が決まりましたら、公証人と実際に遺言書を作る日を決めます。


 当日は、実印印鑑登録証明書公証役場に支払う手数料が必要になります。


 公証役場に支払う手数料は、事前に、公証人から連絡があります。


 なお、公正証書遺言の場合、遺言書作成には、証人が2人必要です。


 遺言者が証人2人を集めることができない場合、公証役場に相談していただければ、公証役場の方で証人の手配をしてくれます。

 

5 実際に遺言書を作成する

 公証役場で遺言書を作成する場合の、作成日当日の具体的な流れとしては、まず、公証役場の受付で印鑑登録証明書と実印を提出します。


 その後、印鑑登録証明書に押されている印鑑と実印が同じものであれば、受付での手続きは終了です。


 次に、公証人のいる部屋に行き、そこで実際に遺言書を作成していきます。

 まず、遺言書を作成する方が、公証人に対して、どういった内容の遺言書を作りたいかを伝えます。
 その後、公証人が、事前に作っておいた遺言書の内容を読み上げます。
 最後に、内容等に誤りがなければ、遺言者、証人、公証人が署名、押印し、遺言書が完成します。


 完成した遺言書は、正本と謄本2通渡されますので、大切に保管しましょう。

 

 このように、公正証書遺言の場合は、遺言書の作成に公証人が携わるため、手書きの遺言書のような失敗が少なく、安心です。

 

 私自身も、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方が、遺言書自体が無効になるリスクが少ないため、おすすめしています。

 

 なお、余談ですが、公証人はあくまで、法的に正しい内容の遺言書を作成しますので、税金や遺留分の事は、ほとんど考慮してくれません。

 

 そのため、相続税等の税金や遺留分のことも含めた内容の遺言書を作成したい場合は、相続に強い専門家にご相談されることをおすすめします。

 

 さて、次回は、遺言書を作成するうえで外せない話題として、「遺留分対策①~保険の活用」について、ご説明します。

 

 それではまた!
 

弁護士が教える自筆証書遺言保管制度

カテゴリ: 遺言書の作成

 みなさんこんにちは!

 

 2月の中旬になり、名古屋もだいぶ暖かくなってきました。

 

 季節の変わり目ですので、みなさんも体調にお気をつけてお越しください。 

 

さて、本日は、「弁護士が教える自筆証書遺言保管制度」と題して、遺言書の保管制度について、ご説明します。

 

 みなさんの中には、この制度のことがきいたことのある人もいらっしゃるかもしれません。

 また、すでに利用してみたという人もいらっしゃるでしょう。

 

 この自筆証書遺言保管制度というのは、簡単にいうと、「手書きの遺言書を法務局が保管してくれる」という制度です。

 

 この自筆証書遺言保管制度の最大のメリットは、法務局に遺言書を預けるため、遺言書の紛失や相続人による改ざんの心配がないところにあります。

 

 実際、遺言書を紛失してしまい、相続人が遺産の分け方でもめてしまったケースや遺言書が改ざんされてしまったケースなども多々存在します。

 

 そのため、最近は、多くの方がこの制度を利用するようになりました。

 

 他方、デメリットとしては、直接、本人が法務局に遺言書を提出しないといけないことです。

 

 そのため、忙しい方や、ご体調の関係で法務局へ行くことができない方は、この制度を利用することができません。

 

 また、この制度では、法務局が遺言書の内容まで審査してくれないため、遺言書の内容に問題があったとしても、そのままとなることもデメリットとしてあげられます。

 

 なお、現在は、約半年間の間で、約14000件の遺言書の保管申請がありました。

 

 次に、この制度を利用して、遺言書を保管してもらうまでの流れとしては、以下の①~⑦のようになります。

 

①遺言書を作成します

 遺言書を作成する用紙は、A4サイズである必要があり、また、余白部分を設ける必要があります。

 さらに、財産目録以外の全文及び日付を自書し、署名、押印をする必要があります。

 その他、詳しい注意事項がありますので、詳しくは、法務省のホームページをご確認いただくか、専門家にお尋ねください。

 

②遺言書をは関する場所を決めます

 保管場所としては、遺言書を書いた本人の住所地か、本籍地、又は、所有している不動産(土地や建物)の所在地のいずれかを管轄している遺言書の保管所(法務局)となります。

遺言書の保管所(法務局)については、法務省のホームページで確認することができます。

たとえば、名古屋市にお住いの方でしたら、名古屋法務局に遺言書を預けることができます。

 

③申請書を作成する

 書式は法務省のホームページからダウンロードが可能です。

 もしくは、法務局の窓口に申請書が備え付けられているため、そちらで直接お書きいただいても問題ありません。

 

④保管の申請の予約をする

 この遺言書保管制度を利用する場合は、必ず予約が必要です。

 予約の方法としては、直接、遺言書を保管する法務局に連絡していただくか、法務省のホームページに、予約専用サイトがありますので、そちらから予約していただくことも可能です。

 

⑤保管の申請をする

 保管の申請の際には、以下の書類を持参したうえで、遺言書を作成された方が、遺言書保管所に行く必要があります。

 ア 遺言書(ホッチキスでとめず、封筒も不要です)

 イ 申請書

 ウ 添付書類として、本籍地の記載のある住民票

 エ 本人確認書類(マイナンバーカード等)

 オ 手数料として、遺言書1通につき、3900円(収入印紙を購入する必要があります)

 

⑥ 実際に遺言書保管の手続きを行う

 

⑦ 遺言書保管証を受け取る

 手続きが完了しましたら、遺言書を作成された方の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称、保管番号が記載された保管証が渡されます。

 この保管証は、遺言書の閲覧、保管の申請の撤回等の際に必要になりますので、大切に保管してください。

 

 このように遺言書の保管制度自体は、それほど複雑な手続きではないため、今後ますます利用されることが予想されます。

 

 もっとも、この制度のデメリットの部分でご説明したとおり、遺言書の内容はチェックされません。

 

 そのため、遺言書の内容に法的に問題がないのか、相続税で損をしないか等については、別途、専門家にご相談する必要があります。

 当法人では、遺言書に関して、無料相談を行っておりますので、ご質問だけでも大丈夫ですので、ご不明な点等がありましたら、いつでもご連絡ください。

 

 さて、次回は「公正証書遺言の作成までの流れ」についてご説明させていただこうと思います。

 

それではまた!

手書きの遺言書の要件

カテゴリ: 遺言書の作成

 みなさま、新年あけましておめでとうございます。
 今年もどうぞよろしくお願いします。

 まだまだ、コロナ等で大変な時期ではございますが、どうぞお体ご自愛下さい。

 

 さて、本日は、「手書きの遺言書の要件」について、詳しくご説明させていただこうと思います。

 

 結論として、手書きの遺言書(「自筆証書遺言」といいます)を作成する際について、絶対に気を付けていただきたい点は、以下の3つです。

 

  ① 形式的要件を全て満たす
  ② 抽象的な内容の遺言書を書かない
  ③ 遺言執行者を指定する

 

 それぞれについて、詳しくご説明します。

 

⑴ ① 形式的要件を全て満たす

 

 まず、形式的要件とは、
  (ア) 遺産目録を除く、全文及び日付を自書する
  (イ) 署名・押印する
 のことを言います。

 

 この2つの要件のうち、どれか一つでも要件が欠けてしまうと遺言書自体が無効になるため、注意が必要です。
  
 なお、法律が変わり、遺産目録のみ、パソコンで作成することができます。
 パソコンで作成した場合は、必ず、署名と押印を忘れないようにしましょう。 

 

⑵ ② 抽象的な内容の遺言書を書かない

 

 遺言の内容が抽象的であると、相続人間でトラブルになってしまったり、遺言書の内容の一部が無効になってしまったりする場合があります。


 たとえば、「長男に全財産をまかせる」や「長男に全財産を一任する」とした場合、遺言書の内容が、長男に全財産を相続させるのか、管理等を任せるだけなのか分からず、遺言書の内容として無効となる可能性があります。


 また、「自宅を長男に相続させる」とした場合、自宅が建っている土地は相続させるのか不明であり、相続人間でトラブルになってしまう可能性があります。


 そのため、長男にすべての財産を渡したい場合は、「長男にすべての財産を相続させる」とし、自宅と土地を渡したい場合は、「○○県○○市○○町〇―○○にある自宅と土地を長男に相続させる」と明確に記載するようにしましょう。

 

⑶ ③ 遺言執行者を指定する

 

 遺言執行者を選任していないと、相続人全員の印鑑登録証明書がないと、預貯金の名義変更や不動産手続きができない場合があります。


 たとえば、相続人である長男と長女の仲が悪かった場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人一人だけでは、預貯金の解約ができなくなってしまうおそれがあります。


 その場合、預貯金の解約を行うためには、裁判所での手続きを行って、遺言執行者を選任してもらう必要になるかもしれません。


 このように、相続が開始した時に、相続人が困らないようにするためにも、遺言執行者を事前に指定しておいた方が良いでしょう


 なお、遺言執行者は、相続人だけでなく、専門家も指定することができます。

 遺言執行者の指定の書き方は、「遺言執行者として、●●を指定する」と記載すれば大丈夫です。

 

このように、手書きの遺言書を作成する際は、
  ① 形式的要件を全て満たす
  ② 抽象的な内容の遺言書を書かない
  ③ 遺言執行者を指定する

を守るようにしましょう。

 

 万一、遺言書の書き方で迷った場合は、無料相談を行っている専門家に一度、ご相談されることをおすすめします。

 

 私自身、亡くなった方が遺言書を作成しなかったがために、相続人が相続で大変な目にあった事例を100件以上見てきました。
 そのため、一人でも多くの人に遺言書を作成していただければと強く願っております。

 

 さて、次回は、「弁護士が教える自筆証書遺言保管制度」と題して、最近新設された自筆証書遺言保管制度についてご説明させていただきます。

 

 それではまた!

遺言書作成キットで作成する遺言書の効力

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!


名古屋も含め全国的に冷え込んできた昨今、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。


コロナだけでなく、かぜやインフルエンザなどにも気を付けないといけない季節になりました。
私自身、手洗い、消毒、マスクの着用など、健康管理に気を付けております。


さて、本日は、「遺言書作成キットで作成する遺言書の効力」についてお話していこうと思います。

 

もしかしたら、みなさんのなかにも、遺言作成キットや遺言書についての本、サイト等を参考に遺言書を作成されている方もいらっしゃるかもしれません。

 

結論から言いますと、遺言書作成キットで作成した遺言書についても、一般的な遺言書と同様の効力を有します。

しかし、遺言書本来の要件を欠いていると、遺言書の効力が認められません。

 

また、遺言書作成キットには詳しく載っていない点が、相続開始後に問題になるケースもあります。


たとえば、遺言書の書き方ひとつで、相続税額が数十万円変わることや、遺留分対策の方法、遺言執行者の指定、予備的条項などについて、遺言書作成キットや遺言書の本、サイトなどに、あまり詳しく書いていません。

 

このように、遺言書作成キットで作った遺言書についても、完ぺきというわけではなく、修正等が必要になるケースもあります。


また、遺言書作成キットは、行政書士や司法書士などの専門家が監修しているのが通常です。


もっとも、行政書士や司法書士等の専門家の中には、紛争予防の観点や税関係の知識について、それほど詳しくない方もいらっしゃるので、注意が必要です。

 

私としては、遺言書作成キット等で、遺言書を作成した後、相続に詳しい弁護士や税理士等の専門家に、一度、見てもらうことをおすすめします。


遺言書を見てもらう場合も、無料で行っている事務所もありますので、そういった事務所を活用してみても良いかもしれません。


なお、当法人では、遺言書を含む相続の相談は、無料で行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

このように、遺言書作成キットに基づいて作成した遺言書だから安心と思わず、作成された遺言書を一度専門家に見てもらった方がよい場合もあります。

 

さて、次回は、遺言書の絶対に欠かしてはいけない要件として「手書きの遺言書の要件」についてご説明していこうと思います。

 

それでは、みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。

エンディングノートと遺言書の違い

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

 コロナウイルス感染拡大について第3波が来ており,名古屋も含め全国各地で感染者が急増しております。


 また,これからの季節,インフルエンザも心配ですので,みなさんもお体にはご自愛ください。
 
 さて,本日は,よく質問を受けるものとして,「エンディングノートと遺言書の違い」についてご説明していこうと思います。

 

 まず,結論から申し上げますと,エンディングノートと遺言書は全くの別物で,たとえエンディングノートを書いたとしても,遺言書として認められない場合があります。

 

 そもそも,エンディングノートとは,自分の死後のことについて自由に書いておくものであり,形式や内容について制限はありません。 


 他方,遺言書は,厳格な法律上の要件が存在し,その要件を満たさなければ無効になる場合があります。


 そして,遺言書とエンディングノートの決定的な違いは,法律上の効力があるかどうかです。

 

 具体的に説明すると,エンディングノート自体には,遺言書のような法律上の効力はありません。


 そのため,たとえエンディングノートに「財産を長男に渡す」と書いたとしても,それが遺言書としての要件を満たしていなければ無効なものとなってしまいます。


 反対に,エンディングノートに書いた内容であっても,遺言書としての要件を満たしておれば有効になります。

 

 エンディングノートが遺言書として効力を有するための要件としては,遺産の分け方等について①財産目録以外の全文及び作成日付を自書し,②署名・押印している必要があります。

 

 なお,財産内容が漏れてしまっていた場合や,「遺産を託す」等の抽象的な文言が使われていた場合,遺言執行者が選任されていなかった場合は,相続開始後,相続人間で争いになる可能性がありますので,ご注意ください。

 

 このようにエンディングノートは,遺言書とは違うもので,「エンディングノートがあるから安心」と思わず,別途,遺言書を作成するか,エンディングノート自体が遺言書としての効力を持つようにする必要があります。

 

私自身の意見としては,エンディングノートとは別に遺言書を書くことをおすすめします。

 

さて,次回は今回に関係して,「遺言書作成キットで作成する遺言書の効力」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

遺言書作成を弁護士に依頼するメリット,デメリット

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

今回は、前回に関連して、「遺言書作成を弁護士に依頼するメリット,デメリット」についてお話ししていこうと思います。

 

まず、遺言者作成を弁護士に依頼するメリット、デメリットは以下の通りです。

 

メリット

①信託銀行に依頼するより費用が安い
紛争予防に関するアドバイスを受けることができる
③弁護士を遺言執行者に選ぶことができる

 

デメリット

税金について詳しくない弁護士もいる
②相続開始後に事務所がなくなっている可能性

 

1 メリット
 ⑴ ①信託銀行に依頼するより費用が安い

 弁護士に,遺言書作成を依頼する場合,弁護士に支払う報酬としては,だいたい15万円から20万円程度になります。
 これは,前回お話した信託銀行に頼む場合と比べると,作成手数料に関して,非常に安いです。

 

 ⑵ ②紛争予防に関するアドバイスをうけることができる

 紛争予防に関するアドバイスを受けられるという点は,法律の専門家である弁護士に遺言書の作成を依頼する一番のメリットと言えます。
 遺言書は,作成しない場合よりも,作成しただけで紛争予防の効果があります。
 もっとも,遺言書の内容次第では,さらに相続人間の紛争を起こさないように予防することもできます。
 この紛争予防の観点から遺言書を作成するには,法律の知識だけでなく,実務経験も必要になります。
 そのため,弁護士に遺言書の作成を依頼すれば,紛争予防の観点も入れた遺言書の作成を行ってくれるでしょう。

 

 ⑶ ③弁護士を遺言執行者に選ぶことができる

 弁護士に遺言書作成を依頼した場合,あわせて遺言執行者になってくれる場合があります。
 遺言執行者とは,遺言書の内容を実現する人を言います。
 遺言執行者の具体的な業務内容としては,相続人全員への通知,遺言内容の開示,遺産目録の作成,不動産の名義変更,預貯金の解約,執行の報告などです。
 遺言執行者の業務を怠ってしまった場合,相続人から損害賠償請求が来る可能性もあり,遺言執行者は,極めて重大な責任を負っています。
 この遺言執行者について,あらかじめ弁護士を指定しておけば,遺言執行に関する重大な責任などを全て,弁護士に任せることができます。

 

2 デメリット
 ⑴ ①税金について詳しくない弁護士もいる

 弁護士の中には,税金,特に相続税に関して詳しくない先生がほとんどです。
 遺言書の書き方次第では,かなりの額の相続税を抑えることができたり,他の譲渡所得税等についても抑えることもできたりします。
 そのため,相続税や譲渡所得税等の税金を抑えたい方は,税理士にご相談されるか,もしくは,相続税や譲渡所得税に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 ⑵ ②相続開始後に事務所がなくなっている可能性

 個人の弁護士事務所に遺言書の作成を依頼した場合,数年後には,その事務所がなくなっている可能性があります。
 これは,大手信託銀行に遺言書作成を依頼する場合には,ほとんど心配する必要がない事柄です。
 個人の弁護士事務所であれば,その先生が急病で倒れてしまった場合,遺言の執行や遺言書の内容の変更に関するアドバイス等が受けられなくなります。
 そのため,遺言書作成を弁護士事務所に依頼する場合は,それなりの規模の事務所に依頼することをおすすめします。

 

 このように,弁護士に遺言書作成を依頼するかどうかについても,上記メリット,デメリットを考慮して判断する必要があります。
 
 なお,弁護士事務所の中には,無料相談を行っているところもありますので,実際に,ご相談してみて依頼するかどうかを決めてみるのが良いでしょう。
 
 さて,次回は,最近特に質問が多かった内容として,「エンディングノートと遺言書の違い」についてお話していこうと思います。

 

 それではまた!

  
 

遺言書作成を信託銀行に依頼するメリット,デメリット

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

名古屋も含め,だいぶ朝夕で涼しくなってきました。

 

そろそろインフルエンザ予防接種の季節になってきましたね。

 

私としても,「そろそろインフルエンザの予防接種を受けないといけないなあ」と思っております。

 

さて,今回は、前回に関連して、「遺言書作成を信託銀行に依頼するメリット,デメリット」についてお話ししていこうと思います。

 

 まず結論として,遺言書作成を信託銀行に依頼するメリット,デメリットは以下の通りです。

 

メリット

① 大手金融機関が遺言作成に関与するため,安心感がある

② 資産活用に関するアドバイスを受けることができる

 

デメリット

①費用が弁護士等の専門家に依頼するより高い

②中途解約する場合に,違約金がかかる場合がある

③紛争が起こった時に対応してくれない

④遺言の執行について,登記移転等は外部委託

 

それぞれについて,以下では簡単にご説明いたします。

 

1 メリット

⑴ ①大手金融機関が遺言作成に関与するため,安心感がある

 遺言作成を信託銀行に依頼するメリットとして,大手信託銀行ならではの安心感があります。

 

 これは,個人の弁護士等の専門家にはないメリットです。

 

⑵ ②資産活用に関するアドバイスを受けることができる

 信託銀行に遺言書の作成を依頼した場合,資産運用についてアドバイスをもらうことができます。

 

 たとえば,預貯金が散逸している人であれば,預貯金口座を信託銀行1本にしておけば,預貯金の管理や資産運用がしやすくなるといったメリットがあります。

 

2 デメリット

⑴ ①費用が弁護士等の専門家に依頼するより高い

 信託銀行に遺言書の作成を依頼する場合の最大のデメリットとして,費用が弁護士等の専門家に比べて非常に高くなることがあげられます。

 

 具体的な費用としては,作成する段階で,30万から110万円程度かかる場合があります。

 

 さらに,年間の保管料も割高なところが多いです。

 

⑵ ②中途解約する場合に,違約金がかかる場合がある

 デメリットの2つ目は,信託銀行によっては,遺言書作成した後,信託銀行との契約を解除する際に,清算金として,違約金を取られるところがあります。

 

 違約金の額としても,20万円程度かかるところや,作成の際に支払った額(30万円から110万円程度)が返還されないことがあります。

 

③紛争が起こった時に対応してくれない

 相続が開始した後,相続人間でもめごとが起こった際に,信託銀行は対応してくれません。

 

 そのため,もめごとを解決する場合は,ご自身で解決するか,または,弁護士に依頼する必要があります。

 

④遺言の執行について,登記移転等は外部委託

 相続が開始した後に,遺言書の内容通りに,預貯金の解約や土地の名義変更等を行うことを,「遺言の執行」といい,それを行ってくれる人を遺言執行者と言います。

 

 信託銀行に遺言書作成を依頼した場合,遺言執行者として信託銀行が指定される場合がほとんどです。

 

 信託銀行が遺言執行を行う場合,土地の名義変更などは,司法書士等の外部に委託します。

 

 そのため,遺言執行の費用とは別に,さらに司法書士等に支払う報酬がかかります。

 

 このように,遺言書作成を信託銀行に依頼する際は,メリット,デメリットを比較しながら,慎重に頼む必要があります。

 

さて,次回は,今回に関連して,「遺言書作成を弁護士に依頼するメリット,デメリット」についてお話ししようと思います。

 

それではまたお会いしましょう!

遺言書作成にかかる費用

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

 

本日は、よくご質問いただく内容として,「遺言書作成にかかる費用」について,お話ししていこうと思います。

 

まず、遺言書作成にかかる費用としては、以下のものがかかります。

 

 ①弁護士や信託銀行などへ支払う報酬(手数料)

 ②公正証書遺言の場合は、公証役場に払う手数料

 ③戸籍や住民票の取得、切手代などの実費

 ④遺言書の保管料

 

これらの費用について,遺言書の作成を弁護士に依頼する場合と,信託銀行に依頼する場合とに分けて,説明していこうと思います。

 

1 ①弁護士や信託銀行などへ支払う報酬(手数料)

   弁護士や信託銀行などに支払う費用については、事務所ごとに、また、信託銀行ごとによっても大きく変わります。

 

 一般的に、弁護士への報酬としては、だいたい15~30万円のところが多いです。

 

 他方、信託銀行に依頼する際は、初めに30〜110万円の費用がかかります。

 

2 ②公正証書遺言の場合の公証役場に払う手数料

 公証役場に支払う手数料としては、だいたい5万円から10万円の場合が多いです。

 

  また、公正証書遺言の場合、証人が2人必要ですので、公証役場に証人を用意してもらう場合は、1人1万円の費用がかかります。

 

 なお、ご自宅や病院などに証人が出張する場合は、手数料に1.5をかけたものと、別途,公証人への日当、交通費がかかります。

 

3 ③ 戸籍や住民票の取得、切手代などの実費

 戸籍や住民票を取得する場合,市役所に収める費用として,戸籍なら450円か750円程度かかります。

 

 また,弁護士や信託銀行に戸籍や住民票の取得を代わりに依頼する場合は,別途2000円程度,費用がかかる場合があります。

 

4 ④遺言書の保管料等

 遺言書を作成した後,弁護士や信託銀行に保管を依頼する場合,保管料がかかる場合があります。

 

 保管料としては,年間5000円から1万円程度のところが多いです。

 

5 遺言書作成にかかる総額

 公正証書遺言の作成を弁護士に依頼した場合,実費等を入れた総額として,20万円から30万円程度かかります。

 

 他方,信託銀行に依頼した場合は,実費等を入れると,40万円から140万円程度かかります。

 

 このように,遺言書作成についても,弁護士等の専門家に依頼するか,信託銀行に依頼するかによって,大きく費用がことなります。

 

 そのため,遺言書を作成する際は,弁護士等の専門家と信託銀行,どちらを選んだ方が良いのかを慎重に判断する必要があります。

 

さて,次回は,今回に引き続いて,「遺言書作成を信託銀行に依頼するメリット,デメリット」についてお話していこうと思います。

 

それではまた!

実際に問題となった遺言~認知症の時に書いた遺言~

カテゴリ: 遺言書の作成

みなさんこんにちは!

いかがお過ごしでしょうか。

 

名古屋でも朝夕は,だいぶ涼しくなってきましたので,みなさんもお体には,お気を付けください。

 

さて,本日は,前回に引き続き,遺言書の失敗例として「実際に問題となった遺言~認知症の時に書いた遺言~」についてお話していこうと思います。

 

  事例 

⑴ 家族関係

 家族構成は,父Aと亡母,長女Bと長男Cです。

 父Aは,5年前からだんだん物忘れが多くなり,2年前に施設に入りました。

 父Aは,難しい話は理解することができませんでしたが,日常会話程度のことは,意思疎通が可能でした。

 長女Bは,よく父Aの様子を見に来ますが,長男Cは,以前から父Aとは折り合いが悪かったため,父Aのところには,ほとんど顔を出しませんでした。

 

⑵ 遺言書の作成

 父Aは,自分が亡くなった後の事が心配になり,「長女Cに全財産を渡す」という内容の公正証書遺言を作成しました。

 なお,公正証書遺言とは,元裁判官や元検察官である公証人が作成に携わる遺言のことです。

 

⑶ 突然の裁判

 父Aが亡くなった後,長女Bと長男Cは,相続のことについて話合いをしました。

 長女Bとしては,父の遺言書があるため,「遺産は遺言書のとおりに分けよう」と伝えました。

 しかし,長男Cは,これに猛反対し,「今回作られた遺言は,認知症の時に書かれたものであるから無効だ」とし,弁護士を付けて裁判で争ってきました。

 最終的に,裁判では,遺言書は有効だという結論になりましたが,解決まで相当な年月がかかりました。

 

2 解説

 このように,認知症の時に書かれた遺言については,後日,遺言書は無効だとして,裁判を起こされる場合があります。

 

 また,今回の事例とは異なり,認知症の時に書いた遺言が無効になったケースも存在します

 

 もちろん,認知症の時に書かれた遺言書の全てが無効になるわけではありません。

 

 しかし,認知症の時に書かれた遺言書は争いの種になる可能性は十分あります。

 

 そのため,転ばぬ先の杖として,遺言書を作成する際は,できる限り早い段階で,かつ,専門家を入れて作成することをおすすめします。

 

 また,現在,認知症かもしれないが,遺言書を作成したいという場合は,なるべくお早めに弁護士などの専門家にご相談することをおすすめします。

  

 さて,次回は,よくあるご質問への回答として,「専門家に遺言書の作成を依頼した場合にかかる費用」についてお話していこうと思います。

 

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